裁判官弾劾制度について
(1) 裁判官弾劾制度
司法権独立の原則は、近代立憲主義の基本原則の一つであり、司法権の独立を実質的に確保するためには、裁判官の身分を保障する必要があります。他方、国民主権の原理のもとにおいては、司法権もまた主権者たる国民の信託に基づくものですから、司法に国民の意思が反映されることも必要です。
日本国憲法は、司法権独立の原則の中核たる裁判官の職権の独立を明文をもって規定する(憲法76条3項)とともに、公務員を選定、罷免する権利は国民の固有の権利であることを規定し(憲法15条1項)、裁判官の身分保障の要請と国民の公務員罷免権の調和を図るために、「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。」(憲法78条)と規定しました。この「公の弾劾」とは、強い身分保障を受けた公務員に非行があった場合に、国民の意思に基づいてその者の身分を剥奪する特別の手続であり、裁判官弾劾法(以下「弾劾法」という。)で定められた裁判官弾劾制度がこれに当たります。