裁判官弾劾制度について

(3) 弾劾による罷免の事由

 裁判官が弾劾により罷免されるのは、次の[1] 及び[2] のいずれかに該当する場合です(弾劾法2条)。

 [1] 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。
 [2] その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。

  罷免を求めるには、裁判官の行為について、職務上の義務違反が著しいか、職務怠慢が甚だしいか、裁判官としての威信を著しく失わせる非行があったかのいずれかの場合でなければなりません。

  この点、訴訟指揮や判決といった裁判官の審理・判断の当否について、他の国家機関が調査・判断することは、司法権の独立の原則に抵触するおそれがあり、原則として許されません。例えば、判決が間違っている、自分の主張や証拠を採用してくれない(相手方の主張や証拠を採用した)、審理が十分ではない(もっと主張立証したかった)等の不満は、上訴や再審等の訴訟手続の中で対処するべきものであり、原則として罷免の事由になりません。訴追委員会が上記事由に該当するとして訴追をした事案の概要は、「(1)罷免の訴追をした事案の概要」に掲載してありますので、参考までに御覧ください。

  なお、弾劾による罷免の事由が発生した時点(例えば判決の日)から3年を経過したときは、罷免の訴追をすることができなくなります(弾劾法12条)。この3年は、訴追請求状を訴追委員会に提出する期限ではなく、提出後に訴追委員会が訴追審査事案を審議議決し、弾劾裁判所に訴追状を提出するまでの期間が含まれます(「(9)裁判官弾劾手続の流れ」参照)。

  また、裁判官に弾劾による罷免の判決を受けさせる目的で、虚偽の申告(客観的事実に反する申告)をした場合には、3月以上10年以下の懲役に処せられることがあります(弾劾法43条)。